半ドア
15フィールズ

僕の訳の分からないミニの中で
君が洗いざらい気持ちを吐露した
その夜も半ドアだった
君がドアを閉めると
いつもかっちりとはまっていない
走行中にトラブルはなかったけど
結構危なかったんだな
とか考えていると
「私の話聞いてるの?」
と君に聞かれたから
とっさに「うん」と答えた
「嘘つき」と君は言った
でもそれは君のせいなんだよ
と自分を弁護したかったけど
勿論そんなことは言わなかった
それが大人っていう慣れだ
「あなたは何一つ分かっちゃいないの」
と君は言う
「私はあなたの高慢さをずっと我慢してたわ。耐え続ければいつかきっと私のことをちゃんと見てくれる日が来るって。でももうダメ。やっぱりあなたは自分のことしか考えてない。ねえ、私の気持ち一度だって考えたことある?ねえ、何でさっきからずっと黙ってるの?なんとか言ってみたらどうなのよ」
君はじっと僕の言葉を待つ
僕はずっと言葉を探す
「半ドア」と僕は言った
君は呆気に取られた顔をしている
僕にも分からない
何だっていまこんなことを言う必要がある
もっと他に
君に話さなきゃいけないことがあるはずなのに
だけど僕の口から出た言葉は
「半ドア」だった
「君がこの車に乗るとき、いつもドアがちゃんと閉まってないんだ。今まで走行中に開くことはなかったけど、とても危険なことには違いない。だから、気をつけて欲しいな」
君はドアを開けて外に出て
あらん限りの力を込めてドアを閉めて
どこかへ去っていった
凄い音がした
もうドアは二度と開かないんじゃないかと思うくらいに





固く閉ざされた空間で
僕は一人ぼっちになった
君が僕を拒絶した音が
しばらく耳に残った
このまま眠ってしまおうか
と考えたけど思い直し
エンジンをかけて
もう半ドアになることのない車を
夜の街へと走らせた


自由詩 半ドア Copyright 15フィールズ 2010-02-17 00:59:42
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