無し
kei99

僕は横になる

生ぬるい妥協が

僕を包みこむ

これでよかった

あれでよかった

あれしかなかった

これが最良だと

僕は横になる

目を閉じる

暗闇が広がってる

目と瞼の距離は

恐らく全くないのに

目の前には

いや

瞼の裏には

暗闇が広がってる

空間は虚構だ

時間は虚構だ

そんな話を聞いたことがある

空想だ

夢だ

妄想だ

机上の空論だ

役に立たない

俺のチンポみたいだ

そんな風に言われた

でも瞼の裏は

ただ真っ暗で

一億光年先もあるようで

一ミリの隙間もないようで

ただ真っ暗で

その僕の眼球と

瞼の裏の間に

今僕は居るわけで

その空間から涙ってもんは生まれて

生まれ続けて

蒸発し続けているわけで

まただ

まだぬるい

ぬるいと

叫び続ける俺が居るわけで

その不安は

孤独は

絶望は

生ぬるくて

俺の周りにへばりついて

粘着質な独特な臭いを出しながら

俺の

目から

鼻から

耳から

肛門から

毛穴から

男のいきり立ったそれを

女のアソコに捻じ込むように

俺の中に入れてくる

レイプされたことはないが

きっとこんな感じなんだろう

生ぬるい嫌悪感と

ジンジンと喉の奥で吐き気はするし

眼球の裏は熱くなって

原子が脳をひっちゃかめっちゃかに

暴れるもんだから

俺の三半規管は狂って

どこに手があって

どこに脚があって

北に頭があるのか

南にヘソがあるのか

富士はどちらか

もう分からない

俺は今立ってるのか

地面はぬかるんでるのか

花を踏みつけてるのか

浮いているのか

脚の先から

痺れが広がってく

頭の先まで来ると

眼球裏のアトムは

激しさを増して

紫色から展開する

虹色の光を放ちながら

部屋を明るくする

脳の痛みと痺れが酷くなる

脳味噌が脳髄が

360°の108乗暴れる

三半規管が吹っ飛ぶ

部屋を出て

家の前の街灯にぶつかる

どうやら俺の三半規管は

致命的なダメージを受けたらしい

枕元でご臨終ですと

めくらのペンギンが言う

貴様に何が分かる!!

俺の痛みを

苦しみを!!

俺の代弁を左胸が言う

右胸はシクシクと泣いている

嗚咽のせいか

オットセイのように聞こえる

まだぬるい

まだぬるい

あれでよかったのか?

あれしか出来なかったのか?

あれで…あれで…

吐き気が酷くなる

部屋に街に

ペンギンがあふれかえる

また寝れない

まだ寝れない

起きるのが正義か?

起き上がるのが正義か?

体に満たされたようだ

捻り込まれた不安が

孤独が

絶望が

吐き気がするが

吐き出せない

起きるのが正義か?

立ち上がるのが正義か?

こんな素っ頓狂な感覚も

夢物語

眼球の先と

瞼の裏の暗闇の中の

夢物語さ

一億光年先の瞼の裏の

暗闇の中の

戯言なのさ

このいんちきな虚構には

その位の器があるのさ

一億光年分の絶望が

ギッシリと

虫と虫の死骸で埋め尽くされてるのさ

吐き気を催す

隙間もないのさ

俺はただ

横になる

それしか術が

ないのだから


自由詩 無し Copyright kei99 2010-02-14 05:47:38
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