赤信号の前で
番田 

テレビで見た車がそこを通りかかった。あれは確か水色のやつだったと記憶している。誰かの大きすぎるような犬が近くを通りすぎていった。浮浪者が飲み屋の前でぼんやりと立ち小便をさせられている。

そこへ色とりどりの格好をさせられた若者がぼんやりと近くを歩いていく。僕はそこで財布の中に使える財産は一銭もなく、微かな頭痛を抱えさせられながら、交差点の前に立ち、来るべき空腹に備えて足を踏みしめようとしていた。

そこには小声だけが僕の小さな噂となってそのそばを駆け抜けていった。カラスの奇声としてそこで鳴いていた。僕のその言葉のひとつすら無くさせられた街角、僕にはもう誰からの姿や形もなかった。

正午からいつまでもそのままだから、本当にそこで疲れ果てていたのかもしれなかった。
それとも僕は疲れてすらいなかったのだろうか。

明日はいったい何をしようと思った。わからないけれど、人だけが僕の姿の前を流れていた。けれど僕には誰から与えられた金もなかった。金は僕に誰からも与えられなかったから、僕は無いギターを手に、僕に弾こうと考えようとしていた。


自由詩 赤信号の前で Copyright 番田  2010-02-09 00:57:42
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