灯のひと 
服部 剛

気づいたら、すでに私でした。 
鏡に映っている、ひとでした。 
産声を上げる場所も 
時代も 
両親も 
自分という役を選ぶ間も無く、私でした。 

砂浜を往く、亀に憧れ 
黙ってそこに在る、石に憧れ 
風の吹くまま旅をする、雲に憧れ 

鏡に映るひとを 
あんなに脱ぎ去りたいと思った夜さえも 
自らを棄てられずに 
今・ここに・こうして立って 
息を吸っては、吐いています 

私があなたの前に立つ時 
互いの姿を瞳に映し 
まったく違うそれぞれなのに 
何処か似ている、一つの声が 
静寂しじまに聞こえる、夜があり 

私があなたの前に立つ時 
今宵、互いの瞳に揺れている 
ひとの姿の、あのともしびが 








自由詩 灯のひと  Copyright 服部 剛 2010-01-24 21:05:14
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