憂愁の瓦
朧月

祖父が死んだ

ほんでもえらいわ
そう言って祖父は私の手を頼りに起き上がった
寝ているままでいい
そう言う私を制し

それは昨日のことだった

いつものようにコンビニで
祖母のおにぎりを選んだ
ついでに週刊誌も立ち読みして
のんきに病室へ向かうのが日課だった

ドアの向こうが 
景色が 空気が
世界が違った

病室の白い天井が真っ黒になって
暗転

   
庭の花が凍ったまま起立する昼間に
祖父はこのうちを旅立った

長い読経に なにもかもの感覚は麻痺し
なぜか 笑みを浮かべ談笑している人を見つける
つめたい つめたい風に髪がとび

白い祖母の頭が
地面についてしまうかとおもったとき
ふあーん と
棺は発車した

うちの屋根には
最後まで祖父が気にしていた
自慢の瓦が
ぴかぴかと 青空にさえていた



自由詩 憂愁の瓦 Copyright 朧月 2010-01-23 21:07:33
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