(無題) 
服部 剛

鏡に映る、私という人にはすでに 
数十億年のいのちの記憶があり 
数え切れない先祖達の声があり 

鏡に映る、私という人にはすでに 
宇宙の初めの爆発と 
宇宙の終りの暗闇が 
今も密かに膨らみ続けており 

そんな奇跡を秘めている 
私という人は、今日も 
陽が昇ってから沈むまで 
今日はとさようならを 
延々と何処までも繰り返し 

宇宙の闇にぽつん、と一つ 
青い惑星ほしの浮いてることは 
顕微鏡でも見えない、無数の人々が 
時に誰かと盃を交わし、時に独り頭を抱え 
笑いと涙の物語を日々織り成しているのは 
恐るべき凡庸なる夢の、不思議です。

(ほら、今日も人のふりした宇宙人が 
 あなたの前を、いつもの顔で 
 通りすぎる           ) 

あの人も 
この人も 
私自身も 
何かに背中を押されるように 
一つの交差点をそれぞれの方角へ 
進んでいるのは 
遥かな空から地上まで 
ぶら下がるピアノ線につながれた 
宇宙の意思による、進行です。 








自由詩 (無題)  Copyright 服部 剛 2010-01-20 23:34:37
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