カバの季節について約束する
たりぽん(大理 奔)


あたしの生き方間違ってるかなぁってのが口癖のマキは
溶けやすい製氷機の氷を適当にグラスにほうりこんで
バーボンを注ぐ
薄くなるのが嫌だから混ぜないでって言うのに
カラカラと音が好きなんだよねって笑って
子供が熱を出して学校休んでるとか
旗当番で早朝の交差点に二日酔いで立ってるとか
アパートの家賃滞納したら
大家からからだを求められたとか
やっぱり口癖のようにグラスに注いでいく

  故郷からの雪の便りは
  そんなマキからの携帯メール
  私の住む街でも
  夜の雪は暗い果てから
  青く光りながら舞い降りる

間違ってるって言う人は正しいのかなぁ
酔っぱらったマキはこれまたいつものこと
柿ピーをくちびるにちょっとくわえて
えらそうな酔っぱらいに限ってツケがたまるんだよねって
ホント、ヒトがよすぎるよ
年下の旦那は逃げちゃったけど
好きだった人の子供だから恨んじゃない
間違ってるよねきっと、訴えればよかった
なんて言いながら、ビールを飲み干して
もう一杯ちょうだいなんて
そりゃネタなんじゃないのとか言ってみる

正しくても間違っててもマキちゃん応援してるよ
いつもそういうと、彼女は涙ぐむこともなく
じゃ、遠慮なくもう一杯いただくね!って
鼻歌交じりにサーバーのレバー倒して
生ビール泡立てていく
「今度暇なときに、動物園に連れてってよ」
ふいに彼女が冗談でも言ったかと思い
カバの季節になったらなって言ったら
「絶対だよ!乾杯!絶対にね」

  冷たい青い雪が
  私の体温を奪って
  透明に流れ落ちていき
  足下で、泥んこの水溜まりになって
  立ち尽くす、そして
  踏み出す先もすべて




自由詩 カバの季節について約束する Copyright たりぽん(大理 奔) 2010-01-05 00:45:46
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