幸福の食卓 ー同級生との再会ー 
服部 剛

元旦の夜のファミリレストランで 
僕が座るテーブルの、一つ向こうに 
少年時代の、友がいた。 

嫁さんと、子供ふたりと、母さんと 

父さんは、20年前の冬の朝 
突然に、心臓が停まった。 

(それから母さんは長い間、貝になった) 

葬式の数日後、朝も早い 
窓から白い日の射す教室で 
久しぶりに登校した彼を見て 
あの日の僕は思わず大声で、名前を呼んだ 

元旦のファミリーレストランで 
あまりに久しぶりの再会に 
何だか恥ずかしかったので 
いつ声をかけるか思案したが

ドリンクバーへと彼が立ち 
(ようし今だ)と僕も立ち 
彼の肩を軽く叩く 

「おぉ!よくわかったじゃん」 

「いい家庭持って、親孝行してるじゃん」 

それだけの言葉を交わし 
それぞれの席に戻り 
僕は少しぎこちなく、本を開いた。 

ふたりの子供と友達みたいに 
じゃれあう 
息子と、嫁を眺める 
母さんの顔にはもう 
20年前の涙は、消えていた。 

すっかり父親になって 
あの頃よりも太ったが 
帰り際に振り返り 
じゃあね、と手をあげる 
仕草も声も 
あの日の、彼のままだった。 








自由詩 幸福の食卓 ー同級生との再会ー  Copyright 服部 剛 2010-01-01 21:48:21
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