風に街角
霜天

夕暮れの暖かい雨の後、で
軒下で忘れられている風鈴を
小石で狙い撃ちにする
ちん、ちりん
乾いた音で
ひとつ、暮れてみる

自転車のベルは
ここまでは響かない
綺麗に揃えた靴で出掛けて
気付かずに転んでしまう
何度も、何度も
教えてくれたはずのことを

人の少なくなった商店街の角の喫茶店を
オーバーラン
その人は見えないような角度でそこにいて
いつものほうきを
空に揺らしている
ふわりの、風
通り抜けて
湿ったアスファルトの匂いで
存在を証明している
暖かい雨だった


風に、街角の、揺れる黒髪の人
通り過ぎようとする日々の分だけ
過ちのようなものを繰り返してしまうから
ただそこで、揺れるほうきを
僕は見ている
眺めている

ちん、ちりん
そう、そこで
転んでしまわないために、ね


自由詩 風に街角 Copyright 霜天 2004-09-22 02:17:01
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