名付けてしまう
あぐり




なんでだろうかものすごくかなしくなって
デスクトップをじぃっとみつめているうちに
呼吸するように当たり前だとなみだが零れて
わたしの鼓動がものすごく頭に響く

しっかりとあたまのなかで
かんじへんかんをしようとこころみる
指がずぅっと動いていく這っていく
今日はもう痛いくらいに寒くてわたしは
キーボードの熱で指をあたためようとこころみる
生きることをこころみる
愛していると呟いている
呼んでも呼んでも届かない声はなんだか
なんだかすごく得体のしれないものでしかなくて
意味を意味を意味を
求めすぎるわたしには
この声の居場所がわからないことが怖い
それでもからだを愛そうとこころみる
歪んでいく視界で睨みつけて文字を生み出す

産んで産んで
誰かがきっとこの言葉達の名付け親になってくれて
いつもわたしが流すものの名付けはあなたがしてくれて
それを意味がないなんて言えるほどに一人では生きられない弱虫で
産んで産んで
ほんとうはわたしも
名前を考えているんだ
世界でいちばんに
うつくしい名前を考えているんだ

なんでだろうかものすごくかなしくなって
夢みたいな昨日を思い出すだけの機械になろうとこころみる
ぼんやりと右手、左手の間を眺めて
画面右端の時計を見やる
また今日も終わって昨日になったことを知り
夢にならない明日を埋めていくだけのいきものになろうとこころみる
なまえ、
なまえ、
ゆるりとしのびこんできたかなしみにつけるなまえ
ほらまた、
産んでしまった





自由詩 名付けてしまう Copyright あぐり 2009-12-18 00:08:09
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