QQ病院のキケンな一夜
ネット詩の悪魔

※本作は、一部に過激な表現が含まれていますが、
 あくまでフィクションであり、
 特定の人物、団体を誹謗、中傷する意図はございません。
 あしからず。


「先生、急患です」
看護[婦]が言った
「今度は一体何だね?風邪?蕁麻疹?
深爪でもしたのかね」
「いいえ、先生
25歳の女性が
×××症候群の既往があり
パ○シルとハ○シオンと
デ○スとレ○ドルミンと
ファ○ースとヘ○トワールを、計400錠ほど服用して
その上、テキーラを一瓶開けて
左腕を切り刻んで
全身血塗れで
血反吐と一緒に消化管を口から吐いて
上行結腸を体に巻きつけて
肝臓を握り潰しかかっています」
医師は、よれよれの白衣に袖を通しながら言った
「何だい。またプシコかね。まったく奴らときたら
どうしてこう夜中にクスリ飲んで
救急車を呼ぶんだろう。死にたきゃ
山手線にでも飛び込みゃいいんだよ
だいたい処方も滅茶苦茶ぢゃないか
一体かかりつけ医は何をしているのかね」

ストレッチャーが処置室に入ると
患者が言った
「先生、最近会社に行くのが辛いんです
片道で4時間もかかるんです
係長が私に強要するんです
俺のをしゃ○らないと
今度の契約期間で馘にしてやるぞとおっしゃるんです」
看護[婦]が言った
「あら、羨ましいわね
私なんて、せっかく捕まえた若い耳鼻科医が
役立たずで
患者の左耳を切り取って
ペットのマングースに喰わせたら
そいつが味をしめて
部長のキン○マに喰らいついて
地方に飛ばされちゃったんです
その地方というのが
また陸の孤島みたいなところで
ところでその患者さんなんですけど
入院中にマスをかいていたら
ラウンド中の婦長に見つかって
婦長が自分の拘束具を出して」
「その話は長いのかね」
医師がカルテを書きながら遮った
「先生、最近会社に行くのが辛いんです
会社の人たちが、じろじろ見るんです
会社の人たちは、みな爬虫類人間なんです
地球を侵略しようとしているんです
不況は彼等が仕組んだ陰謀なんです」
救急隊員が言った
「僕たちに不況は関係ありませんから」

レベルはマイナス1
呼吸は44
脈拍は180
血圧は220-150
えすぴーおーつーは58パーセント
医師がカルテを見ながら言った
「危険であるといえるが
そうでもないともいえる」

役所の人が処置室に入ると
言った
「この治療費は、保険では落とせません
自費診療になります」
組合の人が処置室に入ると
言った
「まったくこいつらときたら
税金を何だと思ってやがるんだ」
救急隊員が言った
「僕たちには搬送する義務がありますから」

係長が言った
「でも不況になると、搬送も増えるだろう」
救急隊員が言った
「ベッドが恋しい
養父の虐待から家出した
ネットカフェ難民の
果実のように瑞々しい16歳の女の子や
微熱を帯びた
チーズケーキのように匂い立つ
8歳児などが特に多いですね」
医師が言った
「まったく、生○保護受給者どもめが
医療券ををただだと思ってやがるんだ」
「先生、最近会社に行くのが辛いんです
食事は食パンだけなんです
クスリを飲むと胃が痛くなるんです
それで胃薬を飲むと、今度は下痢になるんです」
精神科医が言った
「それで腸が飛び出しているんですね
でも監査は拒否します」
役人が言った
「では医師免許を剥奪します」
その時タイマーが鳴った
役所の人が電卓を叩いた
看護[婦]はコンビニ袋で、患者の口を塞いだ
救急隊員は、ひたすら電話をかけた
係長は保険証を燃やした
精神科医は、ひたすら処方箋を書いた
役人は薬を口一杯に頬ばった
組合の人がポルシェのキーをじゃらじゃらいわせた
医師の車よりもいい車だった
その医師が言った
「じゃあ、お薬出しときますから
今日はこれで帰っていいですよ」


自由詩 QQ病院のキケンな一夜 Copyright ネット詩の悪魔 2009-12-06 01:11:26
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