「ヒプノタイズ・マイセルフ/ HYPNOTIZE MYSELF」
Leaf

暮れ沈む夕の陽に
律を重んじる時報が街を覆った
窓の縁に合わせて
待ち望んでいた犬の遠吠え
クオォ〜ンと愛らしく啼く
牧歌的輪唱の景色だ


拡がり渡る音の波に急かされるキミのたましい

還る時間だよ、帰っておいで、と
手招きする夕影が
ひょろ長く伸びてゆく


触れては離れる部屋の片隅に
ぽたり、ぽたり
濡れては滲んだふたつの溜め息
どことなくあやふやな生成りの質感を
確かめる素振りを見せる


と、不機嫌な雷と共鳴した夕立、
雨音と共に雫を置いていった代わりに
キミの温もりを連れ去った


気息奄々と捩れる視界も
縺れ絡まる波動も
湿気って削がれた小部屋の壁に
すうぅと吸い込まれていく


キミが居ないってこと
煙草のヤニで黄ばんだ壁際に霞んでゆく覇気
傍らで希薄に象る現実との狭間にいて


目に留まる、
バンクシーの皮肉と
ジャージャービンクスのおどけた玩具ポーズ


瞼を伏せて“ヒプノタイズ・マイセルフ”


一応、笑ってはみたけど
一応、叫んではみたけど

どうにもならないキミと夕立ち


自由詩 「ヒプノタイズ・マイセルフ/ HYPNOTIZE MYSELF」 Copyright Leaf 2009-11-03 15:18:39
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