坐っているもの
岡部淳太郎

天気はさまざまなものを
当たりまえのものであるかのように
人に見せる
そうして見せながらも黙っている
黙っているから人は勝手に騒いで
動き回ってくれるのだ
道の真中過ぎに
坐っているものがあり
それはただ坐っていることで
坐っているものとして自存している
私の時はとうに終った
そう思わないと目に映る
花や耳障りな鳥の声などが
気になってしかたがないのだ
それらが在るのを当たりまえのこととして
日々の天気の変化に堪えている
傍をさまざまな人が通り過ぎ
その中に私も混じっていたはずなのだが
あの坐っているもの
脱落して今日の蒸し暑さや明日の
風雨に叩かれているだけのもの
あれこそけっして立ち上がることのない私の心の
ほんとうの姿ではなかったか



(二〇〇九年六月)


自由詩 坐っているもの Copyright 岡部淳太郎 2009-08-25 12:43:27
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