深窓の松子。
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私はどれなのかしらん?
と、松子は訝った。

松子の部屋は一辺が13メートルの立方体で、西側の壁に一辺が1メートルの正方形のハメ殺しの窓があって、壁は全部白いコンクリートで、家具は黒いソファーベッドに黒い鏡、それから黒い衣装ケースには黒と白の服、とそれだけ。
地下収納庫には、3年は生きて行ける保存食が入っている。
部屋に鍵はかかっていない。
しかし松子は外に出ることはできない。
硝子のテーブルの上に白いノート型PCがあり、松子の一日といえばその“中身”をじっと見守ることくらいか。

そこには松子(小)がいる。

松子(小)は松子と寸分違わぬ部屋に住んでいる。
それを松子は西側の窓から覗いているというわけだ。
松子(小)はそのことを知らない。

だから松子は西側の窓を気にしている。
そこからはきっと松子(大)が覗いているに違いないのだ。
しかし窓というものは一方通行なので、逆に使うことは禁じられている。

そこでふと、松子は訝った。
私はどれなのかしらん?と。




自由詩 深窓の松子。 Copyright xxxxxxxxx 2009-08-14 22:16:15
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