かげのけいれい
たりぽん(大理 奔)

猛禽の切り取る曲線を雲に重ねてみると
南風の通り道がみえるだろ?
無粋な飛行機雲が一直線に
線香の燃えかすみたいに消えていく
なんべんもね、手をかざしたんだ
日差しが眩しかったからね
ふいに濃さを増した影が
そらに敬礼しているだろ
川面の黒さについて
昨日から考え続けている
透明な水が流れながら
黒く何を映しているのか
セピア色のサングラスで橋の下をのぞくと
そこはもっとまっ黒で
カルスト台地で割れ目にむかう地下水
いや、氷河の割れ目に消える流れのように
そこはもっとまっくらで
あの静かな海にむかって旅すると言うことは
こんなに薄暗く潜っていかなければならないのだよと
それは、打ち砕きたい妄想だ
石を投げる、ただ暗闇を割りたくて
同心円の動揺は
小さな波紋で岸辺を洗い
炎天下のデモ行進の叫びのように
かすかにゆらめいている
猛禽がまた切り取る
南風の香りは潮の香り
これがこの街の掟だ
あの時刻は長針と短針がほぼまっすぐに並ぶ
それは川面の黒さには関係ないのだろう
むさ苦しさに汗ばんだ額をぬぐうと
ふいに濃さを増した影が
やっぱりそらに敬礼している


自由詩 かげのけいれい Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-08-05 00:23:50
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