詩人達の夜明け 
服部 剛

ある者は 
長年夢見ていた舞台に上がれず 
どしゃぶりの雨の中 
膝を落とし 

ある者は 
束の間な恋の物語に幕を下ろし 
曇り日の街の迷路を 
今日も彷徨い 

ある者は 
ようやく見つけた土方のバイトで 
灼熱の太陽の下 
額に汗して、重荷を運び 

ある者は 
少年の頃に世を去った父親の 
遺言のように古びた葉書を手に 
夕暮れの窓辺に頬杖をつき 

そしてある者は 
詩人達の物語を終えた夜の劇場で 
無人の舞台をじっと見つめ 
人も疎らな客席で拳を震わせ、泣いていた 


そんな彼等の面影を 
思い浮かべて 
いてもたってもいられずに 
無人の家のドアを開け 
高鳴る鼓動に包まれながら歩いていった 
夜明け前の海で  
浜辺に独り、膝を抱える  

耳に入れたイヤフォンから 
「ボクニハデキナイ」 
と繰り返す唄を聴けば 

夜明け前の波は幾重にも 
この胸の内に、打ち寄せる・・・ 


そうして僕は 
それぞれの友を 
沈黙したまま見守るように 
日々の労働さえも、突き破る 
たったひとつの詩という、うたを 
奏でる僕等のコーラスを 
いつまでも
夢に見ている 


僕は僕の明日という 
物語の中心へ 
突入して往く為に 
ブルースの碧い炎の燃えている 
胸にそっと手をあてる  
夜明け前








自由詩 詩人達の夜明け  Copyright 服部 剛 2009-08-02 18:39:55
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