創書日和【陽】ミッドナイト・サン
大村 浩一

生温かい風が
宵闇のまちなかを吹き渡る
昼間の炎熱で地表はほてったまま
真夜中の太陽はいま
足元で褐色に光っている


サンパウロはいま南中を迎えた
足元の地層の遠い裏側を
真昼の太陽が熱している
そこでは輝きは頭上遥かにあり
半球をあまねく照らして止まない


突き抜けられない、
なんてことあるものか
検量線計は見えない木洩れ日の
パルスを拾い続けている
月でさえ僅かな影を作れるだけ
大地を裏側から暖めているのは
直径109倍の星からの陽気に過ぎる歌


見えない、ということはない
たとえ見えなくても指を伸ばせば
顔や耳があって触れる
足元には炎熱にほてる土がある
この熱はむしろ安らぎ
夜盗のうごめく気配はあるが
星座も土地の記憶もある
声をあげれば響きも返る


見えない、なんてことあるものか
うつむいていても足裏から
宵闇のぐるりから
熱が染み出してくる
ほてったままの地表の裏で真夜中の太陽は
褐色に光っている
地層をくぐり東へ 朝へ向かっていく


2009/7/28
大村浩一


自由詩 創書日和【陽】ミッドナイト・サン Copyright 大村 浩一 2009-07-29 13:03:34
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