高知県で詩のボクシングを見た。自分がまったく活動していないことを知った。
イダヅカマコト

偶然に偶然が重なって、詩のボクシングを高知県で見てきました。
そして、地方都市でももっと都内に負けない朗読会を行なってほしいと思いました。

7月26日に書くワークショップを高知県高知市で行ないました。呼んでくださったカイノナマエのみなさんにはいくら感謝しても足りないほどです。ありがとうございました。

前日の25日に詩のボクシング高知県大会の予選会が行なわれるということを伺って、観覧することができました。あまりにはしゃぎすぎてご迷惑までおかけして実行委員の方々には申し訳ない思いでいっぱいになりました。

始めてみる「詩のボクシング」は中学生から50代までの広い参加者を集めていました。
飛び入りを含めて予約で18人の朗読する方とそれを上回る観客がいらっしゃいました。
都内の朗読会でも見ることが難しい人数構成には、さすが10年続いているイベントで、NHKでも放映されるイベントの強みを感じました。

滞りなく進行させる主催された詩のボクシング高知県大会実行委員の方と高知県立文学館のかたがたにに対し強い敬意をおぼえました。ありがとうございました。

----------------------
<今回印象に残ったパフォーマー>

今回のイベント一番印象に残ったのは、くらさかさん。
父親とのコミュニケーションを語ったパフォーマンスでした。

父親が歌うナツメロで育った主人公がある日、父親の書いた紙を見つけます。
そこに書かれていたのは主人公の弟の好きなGReeeeNの曲の歌詞。
主人公はその歌詞の間違えているところを直してやる。父親がGReeeeNの曲を間違いながらうたっている
という内容のテクストは、そのオーバーすぎない演技とともに父親への愛情が伝わってくるものでした。

くらさかさんは終わった後でテレビでも紹介されたそう。
ぜひ東京で、猫道さんに紹介したいと思いました。
http://www.youtube.com/watch?v=Ni30oNG3DRU

この日会場にいらしていた詩のボクシングの発起人、楠かつのりさんのブログの紹介文では徳島県で行なわれた国民文化祭で上位に入られたそう。
http://imageart.exblog.jp/12015386/


個人的に一番いいパフォーマンスは岩村さん。
おじいちゃんの葬儀を扱ったもの。葬儀ネタで不覚にも笑ってしまいました。
細木さんという葬儀屋さんがおじいさんの固い骨を砕くために木槌から金槌、果てにはドリルまで持ち出して観客を笑いに引き込むさまは、とても手馴れたものでした。おばあちゃんが会場にいらしていて、おばあちゃん的に優勝なのだから当然優勝だと私は思いました。
さまざまな事情で決勝大会へ駒を進めることができなかったことは残念でした。


テクストでもっといいのがあるだろうなと思ったのは、なかちゃんさん。家庭に適応した自分というのを、悪い予感と重ね合わせて語る詩は女性詩の伝統を踏まえてとてもいいテクストだと思いました。

ほかにも授業形式で詩を作るのみちさんや、朗々とした北村守道さんの歌声、サイコポムプさんのカップラーメンを持ち上げる様など、昼から見ても活気のある朗読会でした。

一番前の観客席で写真を取りつつノリノリで見ていたところ、楠さんからも出てみたらどうかといわれたので、てっきり私も出れるかと思ったのですが、微妙な出場規則のニュアンスによって制止され、出場できませんでした。東京の恥を見せれず残念でした。

--------------------------
<詩のボクシング以外の舞台があったらもっといいのだけど>

詩のボクシングには出場できなかったのですが、一番最後にイベントの宣伝をさせていただきました。

実はうまく自分のイベントなどそっちのけで、ひたすら思ったことだけ述べさせていただきました。

<strong>高知でも(もちろん他の地方でも)「詩のボクシング」だけでない活動をしてほしい、朗読会をしてほしい、絶対に楽しい</strong>、と明言させていただきました。はじめから言うつもりでした。

過去に「詩のボクシング」の商標登録の表示に関して楠さんを批判した経緯があり、彼の目の前でこの発言をしたことで危険性を感じられた方もいらしたと思います。(現にいらしたようです)
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=155869

でも、詩のボクシング高知大会実行委員会の方々がきちんと仕事をされているからこそ、別の軸のイベントがほしいと思ったのです。理由は二つあります。

本当に楽しいからやってほしいということがひとつです。自分がイベントをやることによってできる人脈は必ずしも自分が今もっている人脈と同じものではないからです。若いうちからイベントをやることはとてもすごい社会勉強になると私は今年初めて自分のイベントを持って感じています。

もうひとつは詩の書き手に対する悲しみから出てきたものでした。今まで「詩のボクシング」以外の全国的な媒体が地方を見たことはあったのでしょうか。たとえば松本零士を長崎から連れ出したかのような流れというのはどれくらいあったのでしょうか。

今回、「詩のボクシング」を見ながら私はずっと今まで詩の雑誌が地方の詩の書き手に、何か機会をつくってこれたかということを考えざるを得ませんでした。

「詩のボクシング」以外にどうやって高知の方は詩の評価を全国的に受けれるのでしょうか。

国民文化祭と県庁所在地以外では数えるほどしか売られていない(場所によっては売ってない)詩の雑誌ぐらいなのです。そして雑誌で行なっている詩誌合評は雑誌を読めないとどうやっても読むことはできないのです。「現代詩手帖」も「びーぐる」も「詩と思想」も。

詩の書き手は行動せず、詩のボクシングは曲がりなりにも行動してきたのだなということを感じるにつけ、何冊もの詩誌の書評を書いていない自分にも、そして文学講座を行ないにくい世界にもやるせなさを感じて発言させていただきました。


イベントについては楠かつのりさんのブログで出演された方々のプロフィールを交えた紹介がされています。
http://imageart.exblog.jp/12015386/

また、詩のボクシング高知大会実行委員会ブログでも入賞者の氏名や会場の写真がご覧になれます。
http://poboko.blog95.fc2.com/blog-entry-74.html





散文(批評随筆小説等) 高知県で詩のボクシングを見た。自分がまったく活動していないことを知った。 Copyright イダヅカマコト 2009-07-28 01:44:39
notebook Home