熱帯夜
あ。

少しだけ冷たいシャワーを浴びて
乾燥したタオルで頭を拭く
拭いきれない残り水はしずくになり
首筋を伝い背骨を沿って落下してゆく


つつ、つう、つう


風ひとつないこんな夜には
ちょっと汗ばむ肌が似合う
きちんと乾かさなかった髪からは
相変わらずしずくが流れているが
シャワーの名残か新たに生まれた汗か
どちらなのかはわからない



使い古してすすけてしまった皿の上に
今年最初の蚊取り線香を乗せる
近所の喫茶店の名が書かれたマッチをすり
消えないように気をつけながら火をつける



やわやわと香ばしい煙が細くのぼる
窓を開けて網戸だけにして腰掛ける
手に持ったうちわはもう随分と古く
高校生のときに授業で作ったものだ
軽くあおぐと煙も合わせて揺れる



ゆら、ゆら、ゆうらり



風ひとつないこんな夜には
汗ばむ肌と古ぼけたうちわ
揺れる懐かしい匂いが似合う




自由詩 熱帯夜 Copyright あ。 2009-07-14 19:47:23
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