迷宮組曲/第2楽章/昼下がり
遊佐
*
昼に停まった季節の便りは
いつぞやの名残を含んだセピア色の背景に、日向に生まれ落ちたパステルの淡い配色と、幼子の視線のラフなスケッチとなって
単色に描かれていた風景画を小さな額縁の中から取り出して大きく躍動させる
それは
広場へと向かう民衆のアレグロの足音
*
午後を目一杯孕んだ風が、
爪先から這うように、五感を包み込むように、頭の天辺へと届けられて行く
傷み軋む不安定な椅子に腰かけたままの心には程好い心地良さ、
長旅に疲れたような気だるい午後の微睡みからの解放には素敵な贈り物
それは
悠久を懐きたゆたう海原の凪を行く船の
ワルツの調べ
*
通り雨を避け、
足早に過ぎ行く人々の表情には季節の色と香りが僅かに漂う
どんな時にも
必ず時計回りに時代は流れ、
砂時計の砂は上から下へ、
太陽は何時だって東から西へ、
僕らは
隣へ隣へと流れて行く、
一足飛びに行けるのは夢を見る少年の心と昨日を見ない瞳だけ、
忘れずにいよう
此処でこうして風を待つ間にも楽譜と筆だけは抱いていようと決めた日から始まる
それは
永遠を信じて疑わない夢見人のルフランの響き