僕が本を閉じたときに
たりぽん(大理 奔)

僕が本を閉じたときに
誰かが新しい頁をめくるでしょう

僕がまぶたを伏せるときに
目覚める朝もあるでしょう

僕がこぶしを握るときに
手のひらを開いて母を求める
新しい命がきっとあるのです

  夢の中の魚を思い出せない夜
  はじめて会う人から懐かしい香り
  生まれた街は忘れてしまったのに
  墓地から見下ろす港の夜景が忘れられない

僕は
誰かがこぶしを握ったときに
生まれ
誰かがまぶたを伏せたときに
目覚め
誰かが本を閉じたとき物語を
すすめるのです

僕が閉じた本を
誰かがまた開くでしょうか
僕が目覚めたときに
眠ってしまった夢を
誰も知らないのに

  木の葉が散るときに
  蝉が鳴き尽くした時に
  稲妻が激しく揺さぶる季節に
  小川に蛍を流した夜に





自由詩 僕が本を閉じたときに Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-06-22 00:44:01
notebook Home 戻る  過去 未来