千歳の空から花々を
たちばなまこと

帰ろうかな
そう思った
一瞬を幾度か
ちらして!

5月
空は氷を溶かした青で
お花のジェット
バウンド・フォー・トーキョー
千歳の上空から苫小牧
育った家を見下ろした

掘り込み式の港
石油タンクの整列
製紙工場の煙突からは 白い手
36号線(さぶろくせん)は室蘭方面に 次第に細く
小さくなってゆく
大型客船のあと筋すら 見えなくなってゆく

茶系の大地に 山の桜 山の木蓮
指先の絵の具を枯れ木にのせたように
咲いて
ああこれから短い春と夏が
大切なひとたちをとりまく

弟の幼娘も花鳥風月を指さすようになり
その姉の幼子も叙情を描くようになり
父母の2世 3世たちが それぞれの花畑から
それぞれの花束を
それぞれの香りをたむけている

勇払平野の晴れ渡る枯れ野に
花よ降れ
テンポ82で
霧の向こうに具象化される
予感を握りしめて
内地の大切なひとたちを重ねて
生まれる
絵画よ



自由詩 千歳の空から花々を Copyright たちばなまこと 2009-05-26 10:10:54
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