肺で呼吸するいきもの
因子

ことばが死産する
なまなましい胎児のあしが
私の穴からぶら下がる
無様なすがたに笑いもせずに
がらすの砕けたような瞳で
股の間を見下ろす私を
私が笑い
なるべくやわらかく慰めてやる あきらめたように
頭を撫でてあげよう 死んだのは私だ
また死んでしまった

私は腹を撫でる
もうどれくらいこのままだろう
何度殺しても
産まれようとするけもの
子宮の中から私を
殺そうとするけもの

きっといとおしくなる
自分と区別できないくらい憎くなる
あまく重くなっていく
そしてそうなる前に
私のいのちが切れる

腹を撫でる


自由詩 肺で呼吸するいきもの Copyright 因子 2009-05-20 16:21:08
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