橙の男
あ。

庭の片隅に一本
忘れ去られたようなびわの木が
何の感情もなく立っていて

鮮やかなはずの橙色が
あまりにも風景に溶け込みすぎていて
目立つことも主張もすることなく
素っ気無くその実を揺らしている

一つ手に取りかじってみる
しっかりと歯形が残る強さ
その味すらも素っ気無く
きっぱりとした潔さすら感じ

ふと
男性的だな
などと思う

振り返れば宵の月
このびわと同じ橙色で
思わずつかんでかじりたくなった


自由詩 橙の男 Copyright あ。 2009-04-12 21:28:53
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