夏休みの終わる時
do_pi_can

夏休みが終わる
子供達は山へ行くのに忙しい

夏休みが終わる
細いホームを電車が通過する

夏休みが終わる
かすかに水の流れる音

携帯にひり付くメールが大量に運び込まれる
飛行機雲が空をしわだらけにする
あなたの肌の水着の跡を小さな蝿取り蜘蛛がなぞる
― 何処かへ行ったの?
― いや,何処にも
青い目の少女にじっと見つめられて
夏休みの終りを知る

したたりおちる季節の変わり目の静けさよ
雑踏の中に立ち尽くす時
目の前に用意されたステージに上がりそこねた自分を知る
どこかで非常ベルの音
あなたに頬ずりする夢の後を追い
のろのろと立ち上がる僕の耳元で故郷の山からの風がささやく
夏休みが終わる,と

かつて歩いた細い山道の途中の
小枝の先に揺れていたのは,
今,僕の目の前にあるのと同じ夏の抜け殻だったのか
薄く,ふわりと頼りなく,手に取ると,
氷のように溶けて無くなった
― ごめんなさい,今いそがしいの,また後で
― うん,それじゃあ
消え入るような薄日の中
夏休みが終わる

プールの水が抜かれ
夏休みが終わる

電車の窓が開けられ,風が通り抜け
夏休みが終わる

疲れた心だけを残して
夏休みが終わる

そして,季節のドアが開かれる



自由詩 夏休みの終わる時 Copyright do_pi_can 2003-09-23 14:24:51
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