たもつ

 
 
街がある
人が歩いている
速度と距離がある
自動販売機に虫がとまっている
市営プールのペンキがはがれている
バス停に男男女男女
窓がある
死体がある
死体の側で泣いている人がいる
死体の側で笑っている人がいる
植物の古い匂いがする
犬の気配がしている
ひたすら時計を分解している人がいる
祈りとエゴとが取り違えられてる
引き続き窓がある
向こう側で
桜の花が湿っている
誰かの慰めのように虹がかかり
それはやがて慰めのように
消えていくはずだ
父さん、
僕はかつてあなたを
殺したかった
丁度あなたが
今の僕と同じくらいの歳でした
この街でした
何もできないくせに
本気でした
 
 


自由詩Copyright たもつ 2009-04-06 23:07:56
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