『群青』
東雲 李葉

夜明けの街
ビルの硝子は空を映して
深く青く
深海のように深淵のように
瞬きの度に光の差す時間を
吸い込んで見上げれば
頭上には群青
鳥が泳ぐ青い海
私なんて実はいない
誰かが成り済ましているのだ
ちょうどあのビルの硝子のように
私もまた誰かを映して放つだけ
なんとも粗末な営みだ
私しかいないと思わせて
実は私なんていない
空は映る鏡すべてにあって
実は空なんてない
海は空に焦がれ空を映し
空は海を哀れみ海を映す
初めから誰もどこにもいない
光だけが私を知っている
夜明けの街で自分が何者で
どうして生まれたのか分かりかけたみたいに
朝は眩しく街を覆い
昨日の疑心を忘れたまま私たちは今日を生きる
終わりの時 その視界を覆うのは
光とともに夜明け前の青い色


自由詩 『群青』 Copyright 東雲 李葉 2009-03-17 08:25:10
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