哀歌輪唱
北街かな

わかれ ちぎれる 雲間を
縫いとじてゆく聖歌の雨だ
みんなして一斉に生誕をやりなおす
後ろ向きな朝が明けた

ルリラウラ ウルトゥルル
産声が湿り積乱し 大空をくるんで遮ってゆく
きっと何十年後かには、人に愛されていればいいよね?
願う限りの情熱で唯一を求めるには
受け身がすぎてしまったみたい
もらい泣きはもうたくさん

安直な答え合わせと 軽妙な辻褄合わせと
浅薄な激励の数々を
かつて生まれて間もなかった少女は
どっさり背負ってホームを発つよ
高く声をあげ 迫る不安を牽制し 遠くを見つめて逃避の歌を
ラリルララン ルールールー 今よりも少しくらいは
幸福になれるかもと幻想して

傘は忘れた
吸い込みきれない雨だれに 繰り返される涙を隠して
きっと何十年後かには、報われていればいいよね?
わかれ ちぎれる 雲間から
夜を忘れるための眩い翌日がもれだす

トゥルリラアン リリリルン
次の街に乗り継ぐころには
斉唱も空にひけてゆき
ちぐはぐな旋律も 微弱な雨脚にかわるでしょう

パララパラ チトチトリン
心はたくさん残してきたから
いつだって産声は、やりなおせるんだよ


自由詩 哀歌輪唱 Copyright 北街かな 2009-03-11 19:28:39
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