高杉芹香

きみのいろんな面を見てきて

きみのどこが好きなのかがようやくわかってきた。

本当に強い人だとも思うし本当に脆い人だとも思う。

優しい人だから慈しんで来たんだと思う。



去年と同じ景色の中、やっぱりきみのことを考えた。

夜風が頬に当たって、小雨が僅かに舞うベランダで。

前髪がくしゃくしゃになりながら考えた。



それでもまた春は来るんだろうし。

それでもあたしはきみに出会ったことを感謝してくんだろうと思った。

ただ今のままこの想いを持つことが正しいのか、問いかける時間にもなった。

きみにして欲しいことはあまり思い浮かばなかった。

いや。

あたしが、きみにしてあげられることがもうあまり思い浮かばなかった。

きみは逞しくなっていたし、疲れてもいた。

きみは律して生きていたし、堕ちてもいた。

あたしは今そばにいても何もしてあげることがないような気持ちになった。

春がまた訪れてまたきみは誰かに出会うんだと思う。

あたしはきみを慈しんで来たけれど

あたしなんかよりもっともっときみを慈しむ人に出会うべきだとも思った。

それできみが今よりもっともっと笑えるならそれでいいと思った。

きみが幸せであって欲しいと心から思った。



きみに会えなくなる日々を増やして。

笑わなくなる日を増やしてみようか。

記憶から少しずつあたしを消してもらおうか。

そんなことを思う。

あたしはきみをずっと大切に想い続けるけれど。

あたしはきっといつまでもはここに居られないと思う。



命が尽きてあたしが星のかけらになっても。

きみが創ったものがきっとずっとずっと輝き続けることを願っている。

きみこその幸せを祈っている。


そんなことを考えているうちに夕陽が沈んだ。

波打ち際を走るこどもたちの笑い声が

それでも明日が来ることを暗示させた。



自由詩Copyright 高杉芹香 2009-03-09 00:06:04
notebook Home 戻る