君への賛歌

睡眠と覚醒の間から浮かび上がる君
有機と無機の間から舞い降りる君
敬虔を打ち砕く絶対の真理であり
信仰を嘲笑う冷血の回答であり
一点の混じりけもなく輝ける君
すべての人間の恐怖と嘆きの権化
少年と少女たちの秘められた憧憬の化身

その瞳が光る 生まれたての少年の唇のように
その髪が光る 踊る少女の乳房のように
砂の上を駆けて行く白い脚の軌跡
哄笑の果て飛翔する

偶然と必然の境から笑い声を上げる君
偏見と嘲笑の吹き溜まりの中を泳ぐ君
光と闇の近親姦の子
すべての疑問の到達点であり
すべての回答は君の手の中で消滅する
輝く髪をなびかせ走り続ける君
片手には腐肉に群れる蝿を携え
片手には肌に斑点の浮き出た奇形の赤子を抱き

人々の崇拝と服従を嘲笑う君
捧げられる金と食物を踏みにじる君
子供たちの祈りに唾を吐く君
空の色が変わる 灰色に
街の色が変わる 錆色に
木々の色が変わる 朽ちてゆく
人々の声は何処からも届かない
君は高らかに笑いながら駆けて行く
冷たく硬い白い脚の軌跡
やがてあの月へと届くだろう


自由詩 君への賛歌 Copyright  2009-03-05 22:15:39
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