創書日和【塩】 黒い石
大村 浩一

朝 魚だったものが
夕方には生花に変わった
明朝には昭和を生き延びた築堤も
すっかり掘り崩されているだろう
燃え落ちる前々日に新線開通
潮で潤すことができなかったいきもの
忘れた積りはなかったのに
声をかけられないものから
石に戻っていく
潮招が磯辺を歩いていく
潮位が上昇する
潮招の足跡も潮招も
潮に洗われ消えていく
念誦は必死になされたが
二つ目の塩はいまだ拒まれたままだ
塩 忘れるな
塩 書こう


2008/2/28
大村浩一


自由詩 創書日和【塩】 黒い石 Copyright 大村 浩一 2009-02-28 23:14:28
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