並四日記 その2 マグネチックスピーカーの分解、修理、試聴、夢想
あおば

マグネチックスピーカー 分解・修理・試聴


                              2008年10月17日07:40
分解
眺めていても始まらないので、昨夜、コイルを外して分解した。
取り外したときに力あまってベークライトのコイル枠を一部損傷する。経年のためやや脆くなっている。
コイル枠には黒光りする細いエナメル線がびっしり巻かれていて、解きながら回数を数えたら3870回だった。あまりの回数の多さに作業が長引き、腕と頸が凝ってしまう。


修理
                               2008年10月18日01:33

可動鉄片のバランスも悪いようなので、狭い隙間から覗いてみたら、支柱の0.2?ほどの2本の綱鉄線が片側1本が切断されている。振動を1点で支える重要な箇所で、鳴っている間は常に屈曲を繰り返している故の金属疲労であろう。マグネチックスピーカーの特徴ある音を生ずる要素の一つなので、半田付け部分を分解して鋼鉄線の疲労していない部分と入れ替える。
コイルに0.08?ホルマル線を3800回巻くか、0.3?線を240回巻くかで迷っている。古い真空管に合わすか、現在のダイナミックスピーカー程度にするかで巻き数は大きく異なるのだ。


可動鉄片

マグネチツクスピーカーを分解する
可動鉄片のバランスが悪いようなので
隙間から覗いてみたら
支柱の0.2?ほどの綱鉄線が片側切れている

特徴ある音を生ずる要素の一つなので
半田付け部分を分解して修理する

コイルに0.08?ホルマル線を3800回巻くか
0.3?線を240回巻くかで迷っている

古い真空管に合わすか
現在のダイナミックスピーカー程度にするかで
巻き数は大きく異なる




試聴
                       2008年10月22日20:03

駆動用コイルを0.3?のホルマル線でまき直す。400回巻こうとしたが380回が限界だった。
コイルは簡単に巻き直したが、馬蹄形磁石内に納めるのが一苦労だった。馬蹄形磁石の内寸を0.5?ほど拡大しないと収まらないのが分かる。
強い力で締め付けて、駆動部が振動でゆるまないための工夫だが、反面、組み立ては非常に厄介で、専用の治具がないのでラジオペンチを使用しての悪戦苦闘の末、なんとか納める。
古い並四ラジオの木製ケースにスピーカーを収め、パソコンのアンプに接続して試聴したが、ビビリ音が酷く使い物にならない。可動鉄片の位置が悪いようなので、再び分解して半田付をし直して位置の微調整をしてどうやら使えるようになった。しかし音量を上げるとビビリ音がして、大きな音では聴けないのが残念である。可動鉄片を完全に外して組み直せばもう少し音量を上げられるのが分かったが、分解は簡単だが組み立ては非常に面倒なので、修理した鋼鉄線が切れるまではこのままにしておこうと無精を決めている。安物のマグネチックスピーカーも結構微妙な装置で案外バカに出来ないと先人の工夫の巧みさを再認識する。

この装置で詩の朗読を聞いてみたところ、声の小細工が消えてしまうのか、上手下手の判定がよく分かる。











天下太平
                            2008年10月24日00:35

マグネチックスピーカーを入手してその音を聞いてみたら、昔のラジオで鳴らしてみたくなった。マグネチツクスピーカーには並四受信機がよく似合うと言うよりも、殆どの並四受信機にはマグネチックスピーカーが使われていたからだ。

並四型ラジオ受信機とは三極真空管を3本と整流真空管1本の合計4本で構成されているストレート再生式受信機で昭和10年頃に作られていた。その後、高性能の五極真空管を用いたものも並四と呼ばれて、安価な受信機の代名詞となり第二次大戦中は戦時規格として材料節約の国策型が多く作られた。

参考資料 「並四受信機の名前について」、内尾 悟氏のWEB「ラジオ工房」より↓
http://www31.ocn.ne.jp/~radiokobo/nami4/index.html

スピーカーのおまけに付いてきた受信機の残骸(写真)は、昭和10年頃の本物の並四受信機のようで、早川電気(シャープ)の製品であった。

使用真空管は、56−26B−12A−12F、文字通りの並型の三極真空管であり、増幅率の低い三極真空管を使用しているので、少しでも増幅率を高めようと、真空管の段間には低周波トランスを用いている、当時の低周波トランスは湿度と温度変化の関係で細いエナメル線の断線に悩まされ、電気屋は何台か並四受信機を売れば、すぐに低周波トランスが断線して、その修理に忙しく、それで食っていけるというような笑い話が巷間に伝わっている。
しかし、このような古いものの残骸を目の前にすると、復活させてみようとの妙な気持ちが湧いてくる。高級な受信機でなく、消耗品の安物であるところが、妙に哀れを誘うのかも知れない。
しかし、私は真空管には殆ど馴染みがないので、この4種類のうち、所持している真空管は12Fのみで、他の三本が無い。これらの真空管の新品の購入は殆ど不可能で、中古品でも程度の良いのは4000円/本、もするらしい。高価な上に、いつ切れて使えなくなるか分からない、古い真空管を使うのはあまりにもばかげているので、現在でも容易に新品が入手できる、ミニアチュア管(MT管)の中から特性の似た真空管を探し、 同等な構成で6C4−6C4−6C4−12Fとする。
並四受信機の特徴ある音質を再現するとなると、低周波トランスも音質に関与するので使用することとして、まき直すのは面倒なので、適当な代用品を探す。
このようなことを夢想していると、時間感覚が無くなって、あっという間に一夜が過ぎてしまう。天下太平とはこのようなことなのかも知れない。







散文(批評随筆小説等) 並四日記 その2 マグネチックスピーカーの分解、修理、試聴、夢想 Copyright あおば 2009-02-25 07:11:05
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