やさしい音
うみとゆう


ひろいひろい畑にて
老いた木、一本ありました

ひろいひろい畑には
淋しく淋しく木が一本

ひろいひろい畑に生える
老いた淋しいその木には

ここぞとばかり、この秋は
たくさんたくさん柿がなる

淋しい淋しいその木には
小鳥がたくさんやってきて

淋しい淋しい柿の木は
すごくすごくよろこんだ

もう、淋しくないその木には
たったひとつの柿のこる

今は小鳥も眠るころ
老い木おいきにとまり眠ってる



老いた木そろそろ限界で
残った柿も落ちそうだ

老いた木さいごに頑張って
なるべく静かに柿落とす

小鳥が一羽も起きぬよう
そっとそっと、柿落とす



ひろいひろい畑には
誰もしらない音がする

幸せそうな柿の木と
夜しかしらない音がする





自由詩 やさしい音 Copyright うみとゆう 2009-01-10 23:40:40
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