がらんどう
恋月 ぴの
「死んでしまいたい」が口癖な君に
「生きていれば良いことあるよ」
と言いかけて言い切ることができなかった
それを時代のせいにしたところで何になるのだろう
夢とか希望を持ち難いこんなときだからこそ
敢えて言い切るべきだったのに
言い切れなかった私がいて
そんな私の心模様を察してくれた優しい君がいる
ホームの端に立ち竦み閉ざされた風景を見やれば
向う側へと押し流されてしまいそうな気がしてならない
誰かに繋ぎ止めて欲しいと振り向いても
温もりの気配など認めようも無く
孤独を強いられることへの恐怖に慄いてしまう
そして
そんな思いを単なる甘えと切り捨てられるほどに
私たちの心は荒みきっているのだろうか
「死んでしまいたい」が口癖な君がいて
それは優しさ故の口癖なんだと勝手な解釈をする私がいる
吹き抜ける風の通り道に立ち竦んではいけないのだと
誰かが囁いてくれたような気がして
ホームの端から半歩だけ明日の側に身体を寄せた