【短歌祭参加作品】アラウンド・ザ・ワールド
吉田ぐんじょう



早朝に剃刀を買うコンビニで 剃髪用です 袋いいです


昼下がり主婦がミシンを踏む音は 人を撃ち抜く練習に似て


夕暮れが鼻血のような色してた 鉄のにおいが漂って、冬


にんにくのあのふくらみを撫ぜるたび 欲情しちゃう 特に夕方


砂糖ってクスリにとてもよく似てる さびしい夜にすぐ効くところも


星空を指令のようにサイレンが揺らし始めるひとがまた死ぬ


自販機の釦がすべて売り切れと表示されてる深夜二時半


物憂げに深夜はばたく鳥かごの小鳥の舌は細くて硬い


「東京へくらげを買いに行って来る」そう言い残し夫は消えた


間違いを消して乾いたホワイトと同じ色して明けてゆく空




短歌 【短歌祭参加作品】アラウンド・ザ・ワールド Copyright 吉田ぐんじょう 2008-12-05 08:23:32
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