母乳
小川 葉

姉さんの
制服の胸のあたりが
丸いかたちをして濡れていた

その日は
雨が降ったわけでもなく
ただ姉さんは
少しだけ遅く帰った

姉さんの
こどもの口に
はじめておっぱいを挿入すると
すぐにむせてしまった

勢いが強すぎて
あたりかまわず濡らしてしまい
あるがまま
撒き散らされて
広がった

玄関にふたつ
きちんと並べられていた
ローファーにこびりついた精液を
指摘することもできなかった

濡れたまま乾いてゆく
制服のしみを知覚することなく
姉さんはひとりで
女のからだを洗っていた
 


自由詩 母乳 Copyright 小川 葉 2008-10-30 22:39:16
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