不思議なこと
小川 葉

 
僕と妻にとてもよく似ていて
そのどちらにも
似てはいない
それが彼なのだ

君はいったい
誰なの
と息子の目を見てそう問うと
不思議な顔をしてる

ふと思い出す
僕と妻は
そういえば
お父さんがだとか
おばあちゃんがだとか
亡くなってしまった
僕らの家族の人たちの
懐かしい断片を
覚えてる

君は君だったのか
とまた息子を見ると
静かに寝息をたてて眠ってる

生きている
僕らは家族として
息をしながら
ときに眠りながら
そうして生きている

明日がある
僕らには朝がくれば
亡くなってしまった人たちが
かつてそうであったように
とてもよく似ていて
似てはいなくて
けれども
不思議なことなど何ひとつない

 


自由詩 不思議なこと Copyright 小川 葉 2008-10-28 02:30:59
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