気付けば 秋
高杉芹香

なんていうこともなく秋が来て。

分厚くなった手帳をめくっていたら
仕事かライブか恋かしてなくて
秋が来ていた。

あたしの今年はなんだったんだろう。
こうやって生きてるのが危うく思えた。


不意に焦りに包まれる。
こうして人生が過ぎてってしまうんだろうか。

積み重ねて人生にしたいと思っているけど。
こうやって過ぎた日々を誇れるんだろうか。
これは積み重なった日々といえるんだろうか。


贅沢なんだとも思う。

両親も、生きていて。
仕事もあって。
ある程度の収入もあって。
仲間に囲まれていて。
ひとりじゃないし。
大好きな人もいて。
そこそこ大病せずに生きていて。

それでいて
まだまだ
焦るんだから。

贅沢なんだとも思う。


欲しいものは
なんなんだろう。


物欲は落ち着いてる。

分かっているんだ。

少し
ほんの少しでいいからと。

形のない
その
唯一のものに
欠乏している。


何度も喉が渇いて夜中も目を覚ましてしまう。


秋は好きなのに。
いやな秋だ。


ねぇ。

不意にそこにあたしがいなくなっても
許してくれますか。


逃げ出しても忘れてくれますか。


できたら覚えててくれますか。



あたしは。
だめなヤツです。



信じると決めたのに。
信じられなくなる。



信じられないのは
きっと
自分を信じられないからで

きみを
信じられないわけではないんだと思う。




きみを何があっても愛し続けると決めた自分に不安になることが
こんなに苦しい。


気付けば秋だ。
今年もきみを愛してばかりで過ぎていく。



きみは
そして
誰もに
愛されている。




あたしは。
誰に愛されている?。



気付けば
秋。


散文(批評随筆小説等) 気付けば 秋 Copyright 高杉芹香 2008-10-26 12:11:44
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