つばめ
星月冬灯


 かわいそうなかわいそうな

 つばめ

 苦しくても悲しくても

 飛ばなければいけない


 空は遥かに広く

 未来を彩るその色は

 淀んでいる


 海は遥かに大きく

 未来を満たすその深さは

 果てしがない


 冷たくて冷たくて

 寒い冬も

 つばめは

 飛んでゆかなければならない


 寂しそうな寂しそうな

 つばめ

 遣る瀬無くても辛くても

 飛ばなければいけない


 太陽は遥かに暖かく

 未来を照らすその度合は

 伝わらない


 月は遥かに美しく

 未来を予言するその力は

 喪失している


 暑くて暑くて

 息苦しい夏も

 つばめは

 飛んでゆかねばならない


 色も

 深さも

 度合も

 力もない

 何もない

 何もない

 そんな世界で


 いつまでもいつまでも

 つばめは

 飛んでゆかねばならない


 ずっと

 ずっと



自由詩 つばめ Copyright 星月冬灯 2008-10-11 12:53:28
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