ひつぎが一匹
ピッピ

落ちていくとはいつでも一方向である
僕らはそれでも迷い続けているのだ
ひっくり返せない砂時計の中で
僕らは底を探しながら落ち続けているだけだ
いつかは底に着くだろう
それが望むものじゃなかったとしても
そこにはしかばねがたくさん連なっていて
きっと僕もその1つとなるのだろう
落ちていく途中の風景はキラキラしている
それはガラスの外側だ
あそこにはいつまでもたどり着けない
死のない世界がうらやましい

耳を傾ければ
凡人の言葉しか聞こえない
ここには凡人しかいない
それ以上も以下もいない
みんな死んだことがないんだ
そう思うと背筋が寒くなる
落下速度は
もう速くなっているのか
遅くなっているのか分からない
一つだけ分かっていることがある
逆方向には進めないということ

真っ暗な底の方向を見つめるのにうんざりして
落ちてきた方向を向いていた
落下地点に背中を向けるのは怖かったが
目を向けるよりは随分楽に感じた
落ちてきた方向は明るかった
あそこに自分が過去にいたなんて信じられない
まるでそれは未来のように輝いていた
光はまだここまで届いているが
底に届いているようには見えなかった
いつかはあの光もただの点になり
そしてまぶたの裏側と同じ色になるだろう

垂れ下がる
君の溶ける音が聞こえる
涙の粒はいつも私を映し出している
骨の折れる音が聞こえる
みんな知っている
みんな知っているんだ
だから困っているし
だから哀しい

    朱

      蒼
     翠

   の


 白
   目

    と
  黒


 の
    隙
       間
            か

                   ら


吹きこぼれていく清らかなたましい


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自由詩 ひつぎが一匹 Copyright ピッピ 2008-10-08 19:15:52
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