ショートレビュー・サンデー
露崎

 サン/アローン  石畑由紀子さん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167647

10月5日に読んだ。

 おもしろい。短い詩のいいところは、みじかいところだ。詩は比喩や、普段はあ
りえない言葉の接続を連発するので、それを受けとめて想像するのには、わりかし
集中力と根気がいるとおもう。「サン/アローン」も想像を刺激しようとするタネ
があちこち仕掛けてある。そのかわり全体の分量はすくない。そのへんのバランス
がちょうどよくて読むのがきもちよかった。
 男と女が夜、それぞれの場所に向かって分かれてゆく。ただそれだけの場面を、
作者はこの詩にせざるをえなかった。ということを考えると、がぜんキュっとせつ
なくなる。冒頭、2行が意味ありげにあって、これが想像の行き場をひろげている
ところもいい。なんなの。どうなっちゃうの。というはじまり。よかったです。





 ひとつの車輪が回っていった  こもんさん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=167105

10月5日に読んだ。

 読んでファンになった一作。思いあまって他の詩にもおすすめポイントを献上。
どれも素敵ですが、本作のたどたどしさはとてもいいです。頭のなかのイメージを
表現するとき、流暢にかたられているのを見て、こいつはすごいな、とおもうけれ
ど、それって本当にあなたの頭にあることなの?といういじわるな気持ちになるこ
とも、けっこうある。
 ほんとうはもっと支離滅裂で、断片的で、安易で、無防備なはず。ただ、それを
そのまま加工しないで伝えるのはしんどいし、危ういんだろうなとおもう。それに
たぶん読んでも意味わからない。
 この詩は、そのあいまいかつ不確定なイメージを、なるべくそのまま、伝えよう
伝えようとしてる感じに見える。そのもどかしさ。そこがねー、ぐっとくるのよ。
なんか他人のことがわからない、その感覚に似てる。絶望的に他者がわからない。
そのむなしさ。でも、なんとかわかろうとするじゃないぼくらは。徒労に思えるよ
うな日々のなかに、希望をいだいてもいいのかな。と思えるところがいちばんよか
った。





 見舞い  たもつさん
 http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=166109

10月5日に読んだ。

 家族のだれかが病をわずらう。そのときから、胸にずしんと重いなにかを詰めこ
まれてしまう。この感じ、とてもよくわかる。祖母の介護に必死だった母の姿をぼ
くは見ていて、そのやりきれなさ、ゆきばのなさはひとことではちょっと表現でき
ない。人が死ぬ。というのは、触れてしまうと本当に重たい。だからこそ、軽く人
が死ぬ、ばたばたと人が死ぬ。そんな映画を見ると、嬉しい。その感覚、その弱さ。
そして、それすらも認めてくれる存在がいる。
 見事な配置だなぁとおもわずうなってしまう詩だった。あと、何気なく「〜〜死
んでいくのが嬉しかった」と表現しているけれど、わたしだったら「楽しかった」
という言葉を選んだとおもう。「嬉しかった」とするだけで、何かを確かめている
感じがしてさびしい。「夏の終わりに蝉が鳴かない」という1行なんかすばらしす
ぎる。隙のない鋭い詩だとおもう。



散文(批評随筆小説等) ショートレビュー・サンデー Copyright 露崎 2008-10-05 20:18:47
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