真夜中にダンクシュート
あおば

               080927



真夜中のコンピューターは
パソコンと呼ばれることを嫌う
計算機と呼ばれた頃が
懐かしくて
居心地の良い
専用のルームに
専任の管理者が
絶え間なく巡回し
少しでも異常が予想されると
目の色を変えてチェックプログラムを走らせて
異常が有れば予備機を起動させ
すぐさま部品交換に努める
勤勉な作業員に
厳格な管理員
経営者は
計算機を神のように
恐れ敬い
経費のことにも一切口を挟まない
最高の材質に
最高の仕上げ
芸術品の香りまで漂わせた計算機械
その名をデジタルコンピューターと呼ばれ
ダンクシュート並みの威力迫力をあたりに漂わせ
計算機のあるところと言うだけで
GPSも無い時代なのに
タクシーは迷うことなく走り
数分後には
正門の守衛室にピタリと横付けして
計算機の鎮座まします建物に向かうことが出来た

真夜中のパソコンは
なんども聞かされた
古き良き時代の神話を
あっさりと
ゴミ箱に捨てる
インストールしようかどうか考えるまでもない
最近は見てくれも外聞も捨てて
機能一辺倒になって
価格競争に走る
スリムな身体に
厳しい作業
修行中の若者でも
すぐに音を上げて
逃げ出したり
病気になったり
3Kと言われたりして
もはや夢見ることも許されない
ケータイと呼ばれる奴等からも
ダサイと侮蔑の眼で見つめられ
これからは体育館のような広い床を
見ることすら許されない時代になったのだと
出荷用のベルトコンベアに載せられた最後の瞬間に
どんなセイタカノッポの選手でも
手を伸ばしても届かない
体育館のように天井の高い倉庫の天井を見つめるのです







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは角田寿星さん






自由詩 真夜中にダンクシュート Copyright あおば 2008-09-27 05:06:09
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