少女まんがワールドから肉の話しへ
佳代子


少女まんがワールドのあのピンクの靄の中にいると
書店が丸ごと幻覚剤に思えてくる
美化された男達が刺身のようにならんで
少女達の目で品定めされレジへと運ばれていく
私が初めて読んだのは萩尾望都の作品で
ヘッセ似の鶏肉だった
竹宮恵子はコカイン入りの豚肉で
高口純里はロンタイもガクランも
着色なしの新鮮牛肉してる
似てるかもしれない
種類別にラッピングされ競うように並んでる
少女マンガと精肉コーナー

さて、私が今一番欲しいのは
牛肉かもしれない
もっちりとして 強い匂いのある
あの血に近い色の作品群
今は小野塚カホリかなと思いながら
暗くなった外に目をやると
ガラスに映る店内が
ますますマーケットに思えてくる
この腕のかごには
男達が満ちあふれ
重く熱い言葉が舌のように絡まり
壮絶なバトルがあり
血と汗と抱擁があり
不毛こそ絶対である愛の交わりがあり
ああ すでに
私の右腕は牛臭いゲップをしている


自由詩 少女まんがワールドから肉の話しへ Copyright 佳代子 2004-07-28 22:53:37
notebook Home 戻る