錯視の鏡
智鶴

選ばれた僕に使命など無い、と
君はまた飯事を始めている
権利なら失う前に捨ててしまったよ、と
笑う君は、僕の目に映らない

いつも通りの無言が
君の体温を下げていく

たった数年前の秋のことで
空に浮かぶ雲は、未だ
月の目を隠して笑っている
もう左手のタトゥーは消えない
死んでも未だ
僕は今、月か罪かも分らない
全て知っていた筈なのに

諦めた二月
プラスチックは割れて
届かないように澄んだ雨を降らせて

もう君の残像は死んだだろうか
隠していたつもりの姿
雲は罪の目を開けて
笑っていた
死んでも消えないタトゥーの意味を
君は知らない
それなら、未だ在るかも分らない呼吸と
絶望の問

答えられない筈
僕は誰だった?


自由詩 錯視の鏡 Copyright 智鶴 2008-09-15 21:32:16
notebook Home 戻る