鳥籠の水
皆月 零胤

子供の頃と違う理由で
おはじきを呑み込む
でも重くなるばかりで
透明を手に入れることができない

たとえ半透明ぐらいまでになって
軽くなってふわりと飛んでゆけても
シャボン玉よりもずっと早く
僕は割れてしまうのだろう

空を飛ぶことが自由だなんて
いつから思っていたのだろうか
その代償として背負う不自由を考えると
空を飛ばないことさえ自由なのに

最近まで飼っていた鳥はよく羽ばたいた
でもいつまでたっても空を飛ばなかった
似たものどうしの僕らだからか
何故か同じ時間にご飯を食べた

お互い食べているものをよく床にこぼした
僕が部屋からいなくなりそうなとき
いつも決まって同じ鳴き声で叫んだ
多分僕の名前を呼んでいるんだと思った


籠からだすと嬉しそうに羽を広げたまま
ペタペタと僕のところまで走ってきて
その姿は僕に元気と優しさをくれたから
今日も空になってしまった鳥籠の水を換える

この部屋にはもう僕の名前を呼ぶ声がない
ドアを開け閉めしてもその音しかしないはずなのに
たまに呼ばれたような気がすることがあるから
今日も空になってしまった鳥籠の水を換える


自由詩 鳥籠の水 Copyright 皆月 零胤 2008-09-14 18:50:03
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