天守閣(習作
あおば

              080910



幽霊が
ネギトロハンバーグを食べたいと
裏の畑を掘り返す
ネギは青い芽を毟られて
成長を阻まれた
なんという残酷ことと
幽霊を非難する声が上がり
許可無くして
幽霊の立ち入りを禁止する
木の看板が打ち込まれ
裏庭には
人の気配も幽霊の気配も無くなって
ネギは採る人も居なくなり
葱坊主は
のびのびと背を反らし
風も無いのに
得意そうに頭を振って
裏木戸から
横町を抜けて
ハンバーグショップに出かけたと
名も無き風来坊が
学校裏サイトに
書き込んだ

それ以来
掛川城の天守閣には
魔物が住むと
人は言う
ネギトロハンバーグが食べたいと
昼日向から陰を揺らし
柱を揺らし
瓦を落とし
壁を剥がし
地震のような気配を見せて
駿河湾に
桜海老を走らせる

素足に
鮫皮の
代用靴を履いた青年は
解凍した
鮪の頭を掴んで歩く
騎士道精神を学んだり
般若心経をそらんじたり
神主の真似をしたりして
青春を学んでいるが
未だに定職に就けないと
陰口を叩く者もいるが
アルバイトで学んだ技は
十指に余る
少しは自慢しても好いのではないかと
入れ知恵したら
俺はほんとのデジタリアンよと
空を吹く風のように
口笛を吹く真似をする
いつも青い顔をしていて
昼間はどこにいるのか
誰も知らない

鮪の頭は
ゼラチン質に富み
肉を刮いで
椀に盛り
刻んだネギと
掻き混ぜて
食パン1斤
食後に食べる
ダイエット中の
メタボの親父は
腹を空かせることに恐怖心を抱いているので
いくつになっても餓鬼のようにお膳を抱え込んで
離そうとしない
青い顔した青年が
どんなに腹を空かせているのか
想像する頭を持たないかのようで
ネギトロハンバーグを二口で飲み込んだ
まるで鮫のような食欲だと
笑いながら
青い顔した青年は
鮫皮を履いたまま
ゼラチン質の
半透明になり
すたすたと
掛川城趾公園を行く



自由詩 天守閣(習作 Copyright あおば 2008-09-10 06:54:30
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