さり気なく母娘しましょ
佳代子


さり気なく母であれば
さり気なくあなたも娘であるから
家の重さが気楽だね
愛しさは葉裏に隠した卵のように
日にも晒さずに
風を気取って通りすぎる
着慣れた服の私を
あなたは横目で追いながら
日常の橋の上で目配せを交わす
誰にも気づかれぬように
暗黙の了解
極秘のbirthday
とびっきりのケーキだからね
だからロウソクはいらない
雀のように飛び回って
いつでも口にできるように
甘さは控えて
いつでも触れられるように
低いところで

重くなると枷になるから
重くなると血の赤が痛むから
私はさり気なく母でいる
邪険な言葉に砂糖を混ぜて
あなたもさり気なく娘でいる
反抗にリボンをつけて
飽きることもなく
眼差しを変えることもなく
時は巡り
今 ハンガーが重くなる

これはあなたの重さ
さり気なくのゲームの得点
インナーで華やぐ物干場に
あなたの女性が息づく
ピンチで留められた小物たちが
花飾りに見えてくる
いっぱいのあなたが私から零れ出る
私から歩き出す
あなたには秘密のままで
さり気なく生きましょ
着慣れた服のままで
きらきらしてましょ


自由詩 さり気なく母娘しましょ Copyright 佳代子 2004-07-26 20:50:02
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