大地がみている
砂木
紙に書く言葉を選び
心の住む所を明かす
季節の中 暦に書ききれない
熱と冷気がある
何度も歩いた生家前の道
しだいにその回数が追いつく
婚家前の道
道すがら挨拶をかわした人々
登校を見送った子達も所帯を持ち
嫁いだばかりの頃元気だった人々も
だんだんと 過ぎ去っていった
結婚指輪をしなければ後ろめたくて
赤く痒くなるのをこらえていた
今は我慢しない はずしても大丈夫
婚約指輪と共に タンスの奥にしまってある
なれない土地で生きていく決意は
結婚をしたい一心からであっただろうか
夫の家族との同居は やりきれない事もあった
味つけから 水から 洗い方まで
生家とはまるで違う生活を
余裕もなく 飲み下して 飲み込んで
アフガニスタンについて 私は多くを知らない
政治を語る頭もないけれど
テレビの前で泣いてもなんの役にも立たない
私の息子は消防士として仕事をしたのだ
イラクと戦争をするため死んだのではないと
イラクに渡り 反戦を訴えてた
同時多発テロの ご遺族の方々などとかさなり
本当の敵も味方もわからない
生きている人と死んでいる人しかわからない
殺した自覚も持てない
たいしたこともない給料明細から引かれている
税金のいくらが 爆弾と支援になったのだろう
テレビで 砂漠に緑の土地を映していた
緑を育むためには水と汗が必要だと
なれない土地に住むためには
忍耐と努力が必要だと
あれなら私でもわかる
祖父母が 杉畑を開墾して今ある生家の林檎畑
ひでりの時には 木を守るべく
奪い合うようにあたえられる水
大地に緑をなし
大地に還るすべて
銃の痕がいつまでも痛む
死なない人はいないのに
憎しみの的になる
それでも食べていかなきゃいけない
あわせていかなきゃ やっていけない
いつも心の住む天国と地獄は
同じ場所にある
幾度も歩いてるこの道は
地上にある