一次幻想
ねなぎ

子供の頃
山手線よりも
中央線の方が
好きだった
どこまでも
走っていくと
思っていたから

ずっと
真直ぐで
余計なものなど
何も無い

直線に
憧れていた
ずっと時間が
続くと思っていた

ただ
真直ぐに
走れると
思っていた

単純で
簡潔で
ただ
そのままで
良かった

いつしか
覚えこまされて
曲げられる

プレスされて
あてはめられ
ねじを切られて
締められていく

ラインは歪み
加えられ
選別されて
チェックされる

直線は
平面となり
立体になるように

複雑が
煩雑になり
雑然として

繋がれて
巡らされ
ぐるぐると
同じ所を
周る

中央線は
直線では
なかった

僕も直線には
なれず
降りてしまった

そして
走ることは
なくなった

品管に分けられて
除かれたように
僕は独り
総武線
を待っている

僕の中の直線は
今もどこかを
走っている

時々
その直線を
思う


自由詩 一次幻想 Copyright ねなぎ 2004-07-26 15:47:06
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