シンディ
Utakata



九歳のときに父に犯され
十一のときに母親を撃ち
十三のときに車を盗んで
十五のときに国境を越えた

シンディ
油とゴムの匂いがする
後部座席がいつもの居場所
二十の年までに
サボテンの棘に突き刺されて死ぬのだと
生真面目な顔でうそぶいている
シンディ

気持ちがいいなら
それはそれで結構なことで

***

十二のときに肢体を目にし
十四のときに身体を売って
十六のときに銃を買っては
十八のときに船に乗り込んだ

みんなが叫んでいたほどには
世界は簡単には変えられなかったし
子供の頃に
(そんな頃なんてあったのだろうか?)
持っていた夢とかそんなものは
一日分のガソリン代の
糧にもならなかった


***

シンディ
ほんとうは
サボテンじゃなく向日葵が見たかったのだと
言った
シンディ




自由詩 シンディ Copyright Utakata 2008-08-21 19:29:47
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